珠城りょう&美園さくらのたまさくコンビは、8月15日の退団をひかえ、スカイステージでの特別番組と各種出版物により、コンビの関係性がより見えるようになってきました。それでも、「桜嵐記/Dream Chaser」上演中、舞台上で美園さくら嬢に珠城りょう氏が何かささやいている模様だけれど、それをファンにべらべらとしゃべるでもなく、、、トップとして珠さまが規格外のさくら嬢をどう支えたのかについては、さくら嬢の言葉から少し覗ける程度。
端的に「悔しくないのか」という言葉で鼓舞した、という情報が一人歩きしてもいけません!背景を少し語らせてください。
宝塚グラフ2021年8月号の美園さくら×珠城りょうサヨナラ対談に「All For One」の稽古中、「悔しくないのかというお言葉をいただき」とあります。 「All For One」 はさくら嬢がマリーアンヌ役とマリア・テレサ役(新人公演)を与えられた公演でした。
新人公演に出演している学年内は、本公演での役とセット視するというか、仮に本公演での出番が少な目だったとして、新人公演ではちゃんと舞台経験がつめる役をもらう、のが理想です。
2017年「All For One」という演目で、マリア・テレサ役は、海乃美月がいつものイメージを越えてはじける役であり、それをさくら嬢が演じても意味ない、とまでは言えないけれど、新人公演での学びの最大化・最適化は望めない感じでした。感覚として覚えています。可憐な海ちゃんが演じることによる可笑しみ、をさくら嬢はどう処理したら良かったのか?
前年2016年には、「FALSTAFF」でバウヒロインを経験してからの、マリア・テレサ。役回りはきれいに右肩上がりに増強されるものでもないですが、運悪く2017年初の珠城りょう&愛希れいかトップコンビお披露目公演「グランドホテル」が極端に役が少ない演目だったんですよねー。
グランドホテルにおける美園さくら嬢の役は、電話交換手(新人公演トッツィ役)。舞台上で物語が進行している途中も、主役の男爵はじめゲストや従業員がホテル内の日常としておしゃべりをする芝居を後方で続ける、という演目。
さくら嬢の電話交換手はけっこう目立つ交換手だったのですが、宝塚大劇場の舞台で思いっきり芝居をするという経験はこの段階でも得られていません。グラフ対談のなかでも「私は、本公演でセリフをしゃべったこともなかったので…。」とあります。
本公演でセリフをしゃべったことがない状況で、マリア・テレサ役という役(スペインなまりのフランス語しゃべる設定)はきつい。
右肩上がりという観点では、珠城りょう氏ご自身、2014年「PUCK パック」で新人公演主役をもらってもおかしくない位置にいましたが、妖精パック役は、朝美絢氏へ。でもこの場合は、本公演がボビー役なので成り立つんです。海乃美月嬢がちょっとファニーな役を与えられたのに似て、ロックシンガーを目指す森番の息子ボビーというはじけた役を殻を破って演じなさい、という糧を得る場でした。
「スカイ・ステージ・カレッジ~月組 トークライブ~」でグランドホテルのイェロー・パヴィリオンの場面、両手を挙げたひとりダンス状態で踊っていたのは総勢何名?というクイズになるほどの群像芝居だったグランドホテル。(答えは52人!)その公演がひとつ挟まったことにより、芝居らしい芝居の場数を踏む機会がひとつなくなった、感じでした。
2017年5月に博多座公演「長崎しぐれ坂」があったため、All For One の稽古が始まるタイミングは、さくら嬢を含む研4・5あたりの学年の組子には非常に大切なタイミングだったと言えます。
本公演でセリフをしゃべったことがない状態から抜け出す好機と、さくら嬢が成長していけるタイミングが完全に重なった感じ。珠さまが、すごい上昇志向で目を血走らせて「悔しくないのか」と言ったと思われたらあれよね、仮にそうだったとしても悪いことではないですが。
チャンスを逃したという自覚を持ったほうが本人のためだと思ってかけられた言葉だと思います。
その証拠と言っては大げさかもしれませんが、マリア・テレサ役のさくら嬢は、ちょっと変な方向に行っていました。王道の芝居が、引き出しに入っていないのですから。基礎のないバリエーション状態でした。この役で新境地が開けていたなら『悔しがる』必要はなかったのだ、と言えます。
芸事の研鑽って、不思議ですね。やってること自体は華やかで、チームワークが良くないと一体となって良い舞台はつくれないので、和気あいあいはデフォルト!その根柢に流れる「厳しさ」は誤解を生みやすい。でも精神論じゃなくて実用的なことなんです。
例えば、同じ対談に珠さまが、「雨に唄えばのヒロイン、キャシーとして舞台に立っているんだから」と言って諫めたという箇所があります。
つまり後輩として舞台に立っているのではない。これは大前提中の大前提。
同じ学校に通った生徒が研究科〇年、と称されて5分割され組配属される世界で、舞台に立ったら先輩後輩は関係ない、というのを周知キャンペーンしていかないと破綻しちゃう。。。(難しいのはわかりますよ、だから振付で娘役さんがトップさんや先輩に触れたりする場面で、遠慮がちにかるーーく手を添えてたりすると💦💦💦💦💦💦いじらしくて💦💦💦💦💦💦)
ここにきて、これほどサヨナラ企画に心を揺さぶられるとは思いませんでした。月組ならではのトップコンビだと思います。トップの男役も娘役もふたりして型にはまらないんだけど、外から圧がかかったときに曲がっていかない。落ち着いているのにちゃんとハッピー。🙏🙏🙏🙏🙏
追記:対談の終わり方を書いておきますね。プレお披露目、お披露目、御園座公演「赤と黒」「WELCOME TO TAKARAZUKA/ピガール狂騒曲」の思い出と「桜嵐記/Dream Chaser」への意気込みを語りつつ、さくら嬢が締めに入ります。(珠さまにふって対談に招かれている側だからとふり返されるのですが)「…あの日に珠城さんにお言葉を頂いたことは、誰が何を言おうと、今まで生きてきた中で一番印象的な出来事なんです。言葉にすると軽くなってしまってイヤなんですけど…。私の想いはこんなものじゃないんです!」←←しかと受け止めた!
青春3部作?完結編↓↓



コメント