5組の特徴

花(1921)月(1921)雪(1924)星(1933)宙(1998)と創設された順番により、花・月と雪・星に2分割できます。宙組は、1998年に新設された第5番目の組なので、他組比で伝統がないと言えるので、別格として扱うとわかりやすいでしょう。

花組はダンス、月組は芝居、雪組は日本もの、星組はコスチューム、宙組はコーラス、とあえて一言で表すならば、というキーワードが存在します。最初の組である花、その第2班として枝分かれしたかたちで生まれた月、と、残り第3・4組のあいだには、自由度の違いがみてとれます。つまり、花・月に比べたら、雪・星のほうが、ゆるい雰囲気がある印象。宙組がゆるい雰囲気なのは、デフォルト。

花男と他組の○○男

組の名前に男を付けると、その組の男役さん、という意味ですが、それ以上のインパクトを持っています。解説すると、

花男
男役美学に対するこだわりとプライドがあり、娘役さんたちにも臆せずレディファーストならぬ花娘ファーストで接する。洗練された群舞の担い手たち。

月男
大胆な月娘と二人三脚で、飽くなき研究心を持ち芝居に傾注する。感情豊かな歌と統率のとれた群舞の担い手たち。

雪男
日本物上演の伝統で培った着物の着こなしや所作で魅せる。その一方、元気はつらつ、他組より多めの漫画原作の作品のなかで、難なく見目麗しい人物として弾け、息づく。

星男
華やかな容姿と型にはまらない姿勢を持つ。体育系気質を、メイクの濃さや、ショーの熱さ・激しさとして表現する。

宙男
長身、現代的でスマート。他組で育ったトップスターさんを受け入れつつ、のびのびと歌い踊る。

花男が、一番頻繁に聞かれるフレーズです。宝塚の伝統の継承者として、宝塚=花組を体現している、体現していく存在という意識が強く、周囲もご本人たちも「花男は…」という言葉を口にしやすいためです。

花組の対極ともいえる宙組の特徴は、そういうイズムの上に成り立つものではありません。高身長、コーラスなど、目・耳で、確認しやすい特徴です。加えて、1998年初演の岡田敬二作ロマンチック・レビュー「シトラスの風」などから感じる演目のおしゃれさに象徴されます。

月組に関しては、若いトップスターが多く、2021年10月現在の組長・副組長も5組中一番若いタカラジェンヌさんが務めています。上級生から下級生に至るすべての組子が、役名のあるなしに関わらず与えられた役目を芝居のなかで120%全うする姿が見られます。

雪組は、日本ものの上演や、歌唱力の優れたタカラジェンヌが在籍していたなどの実績の重なりにより、日本ものと歌唱力が売り、みたいなイメージが醸成されました。トップスターさんと組子が一丸となって「日本ものと歌がうまい」定評を根付かせ、引き継いでいます。(和装の着こなし、という視点なのか、芯の強い大和なでしこ、みたいなイメージが娘役陣につきがちなのか?ショーなどで娘役が総出で踊る場面が一番多い印象。花男、の次によく耳にするのは、雪娘のような気がします。あと、漫画やアニメ原作の作品が回ってきがち。)

星組が多く上演している作品には、コスチュームものが多い印象。さすが星組、衣装の着こなしが秀悦!メイクが濃い!みたいに語り継がれ、それを裏打ちするような華やかなトップスターが排出され、組カルチャーが引き継がれていきました。

組の特徴を聞かれて、生徒さん自身が答えたり、組替え後にどう感じましたか?みたいな質問に対する答えがどんどん積みあがっていきます。花組にきて娘役さんに対する紳士ぶりに驚いた、月組では台本無しでの稽古が早い、雪組はみんなで協力する、星組は体育会系でにぎやか、宙組は自由などの発言がありました。

他の組を全く知らずに宝塚人生を終えていく方から、3組くらいを渡り歩く方までいらっしゃるため、他組の事情は又聞き状態の方から、実際に所属して体感した方まで、さまざまなです。組子によっては、間違った印象を持っていて、実際に配属されてみたら違った、みたいなこともあるかもしれません。(近年顕著なのが、演出家の小柳奈穂子先生と星組の関係。星組作品でデビューだったこともあり、彼女の手がける作品の特徴と星組が結びつきがち。)

配属と組替え

宝塚音楽学校卒業後、初舞台を終え、組回りという研修のようなものを終えて、いよいよ配属が決まるとき、宙組に背の高い生徒さんが配属されると、ますます宙組は身長が高いというイメージが強まります。

ダンサータイプか、いかにも正統派に育ちそうな生徒が花組へ、個性的で芝居への探求心がありそうな生徒が月組へ、日舞が好きだったり日舞に長けた生徒が雪組へ、美の権化のような生徒さんが星組へ、というのがイメージ固定型配属ですね。

これを複雑にするのが、見た目よし、ダンスよし、芝居よし、歌よしだったりして、どこに配属されても、それなりに納得させられてしまう高度人材の存在。ここで決め手となるのは、生徒の要望も取り入れつつ、各組に実力の差が出ないように5分割すること。生徒の技能や特徴に沿って配属を決めることはほとんどできないので、高身長だから宙組へ、は偶然である可能性が高いです。

さらに組の均質化を起こしそうなのが、組替え。在籍して数年~10年で、人数調整、各組プロデューサーが強化したい人材を確保するため、などの事情によりシャッフルが行われると、行われた組間で組カラーが混ざる感じになります。育った組、ホームグラウンドみたいな感覚はありますが、たいていのタカラジェンヌは異動した先の組でさらに花開くいわばハイブリッド現象を見せてくれます。

組カラーがあるのは良いことだけど、5組のあいだに人数や実力で大きな差が出ないするのが優先であるはず。組カラーはあくまで慣習の違いとか、引き継がれてきた小さなことの積み重ねの結果ぼんやりと浮かび上がる色、だと思います。

組で育ったいわゆる「生え抜き」トップスターは、組カラーの象徴と言えます。生え抜きのトップスターがいれば、そのスターさんが率先して組カラーを継承する人になりますが、宙組には組が誕生してから長きにわたり生え抜きトップスターがいませんでした。2025年4月に宙組史上初の生え抜きトップスターが誕生しました。95期の桜木みなと氏。彼女の就任前後から、いかにも宙組にまわってきそうな演目が多くなり、組の特徴が際立ってきた印象があります。

既にある伝統や組カラーのうえに、トップスターひとりひとりの個性に合わせて演目が選ばれていくことで、また新たな方向性なども足され、それらが混ざりあって綿々と宝塚5組は続いていく、そういうことなのでしょう。

ーおしまい

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