OG率いる非人間組と市井の人の折り合いが悪いポーの一族

ポーの一族 感想

男役のOGさんで卒業後女優としてセリフを言うときに、女性の話し方で舞台にたった経験がないため感覚がつかめていない、みたいな発言をしていらっしゃる方がいました。(壮一帆さんだったと思う)ほとんどの元男役OGさんは、一人の個人として女性の話し方をしていても、女性の役が発するセリフをしゃべったことはないので。

宝塚で10何年経験を積もうとも、卒業後に女優として舞台に立つとそれまでの豊富な経験値がゼロとまでは減らないものの、女性言葉「セリフ」に関しての技術的な後ろ盾はうすーい状態に。(どんな元トップスターさんでも、急に「~だわ」語尾のセリフを言い出したら違和感が。。。だんだん女優さんっぽくなっていかれるのはありです)

そういう意味では、明日海りお氏が2021年にミュージカル・ゴシック「ポーの一族」でエドガーを演じられたことは、慣れ親しんだ役ということだけでなく、現役時代の経験の積み重ねをファンが噛みしめられるありがたーい舞台でした。公演期間が宝塚より短いぶん、体力的な負担も減ってさらに役が深められた状態で立たれた舞台だったのでは、と推測します。

スカイステージが、この作品を4月に計4回も放送。これも同じくありがたーいことなのですが、OGさんが出演した宝塚発の作品が全て放送対象ではないはずで、なんだか違和感があります。

そんな感じであれこれ思いながら視聴していたら、非常に時間がかかって消化するのにも時間がかかりました。様々な思いが去来したわけですが、今回は心のフィルターを外してそのまま書きます。

属性のねじれ

宝塚時代の当たり役といっていいエドガーとしての出演で、明日海りお氏が放つ圧倒的な存在感!が印象の全てを持って行くのがこの「ポーの一族」@御園座千秋楽でした。

明日海りおが提示するのは唯一無二のエドガー像!同期の夢咲ねね&純矢ちとせ嬢も出演しているから、下支えも豪華。

夢咲嬢のシーラには、非人間要素がたっぷりで、ぞくぞくっとくるほど。綺咲愛里嬢も、芝居の上手さがやっぱこれよねー、という感じ。愛らしさと相まってメリーベルという役自体が新鮮に感じられました。

涼風真世氏にいたってはもったいない気もするけど、世界観を深める存在ですよね。宝塚版と違って、怪しい世界観を存分にショーアップしてきたな、という感じの演出。そこにぴったりはまるのが、かなめさんです。

ところが、というかそれゆえにと言うべきか、、他の出演者の属性がバラバラなのが気になりました。

ミュージカル、テレビ、歌舞伎。。。普通はそれほど気にならないでしょう。が、この舞台の場合は、人間組とバンパネラ組にくっきり分れており、バンパネラ側を宝塚OGで固めているため違いが浮き彫りになりすぎています。演出家小池修一郎先生の意図として、超自然的存在を浮きたたせるための配役をされたようですが、OGが突出しすぎたねー。

宝塚OGは立ち姿が綺麗で動きにムダがないので、見た目と動きにおいて、市井の人々とは違いすぎてしまうのよねー。

これは構造上の問題です。

エドガーは主役だから除くとして、、バンパネラ組に属する男性、つまり非宝塚OGが演じるのがポーツネル男爵と大老。すると、同じ一族だというのに、他は女性だから全員OG、という構造。

そこに、人間キャスト組にも若干のOGさんがいるから、ねじれ現象発生。特に元月組男役の美麗さんが、その身長と浮世離れした美しさで目立っているのもなんだか混乱しちゃう要因なんです。。。

2021年初の上演直前には、エドガー&アランという組み合わせに関して、美弥るりか氏とか七海ひろき氏とかいっそのこと89期共演者を、という妄想に現実味がありました。明日海氏が女性を演じるわけではない。ならば、他のOGさんが男性として共演しても問題なさそう、と。でも、よく考えてみたら、そうじゃなかった。バンパネラ組の主要人物、ポーツネル男爵こそOGさんが男役に戻って演じるべきだった!単純にバンパネラ組を全部OGさんで統一するために。

エドガー(明日海りお)、アラン(千葉雄大)、ポーツネル男爵(小西遼生)というキャストには納得。ただ、小西氏は、シーラより非人間歴が長いわりにはちょっとだけ人寄りに見えました。

ミュージカル畑、テレビ畑、歌舞伎界からの出演者加えて、ダンサーさんが混ざっているのもより属性をバラけさせている感じがしました。これも外部作品の性(さが)なんですが。

各人、セリフの声、歌い方、動きが出身によって少しずつ違う感じ。アランの母親役としてそれほど全面に出てこないレイチェル(純矢ちとせ)が話し始めたら、セリフの明瞭さと立ち居振る舞いが際立っていて、役の上での重要度がちょっと変なことに。。。

千葉雄大さんのアランは、ナイーブな青年でありながらも、お声なんかけっこう太く、そこは人間の男性よね、という感じ。得体のしれないものと触れ合ったときの恐怖がすごく出ていました。

エドガーが連れて行きたくなるような。

宝塚版での明日海りお&柚香光コンビの場合はちょっとだけ唐突な感じがしたけれど、その辺は改良されていてちゃんとエドガー&アランのリアルな行く末、みたいなものが見えて引き込まれました。

結論としては、キャストを変えて同じ作品を観られるのは比較大好き人間にはとてもうれしいことだったのです。でも、バンパネラVS人間の間に綺麗に線を引けたなら、どんなに良かったかなー。無理だとはわかっていても、バンパネラは全員OGだとすっきりしたなー、と。

単純に宝塚OGは技術が厚くて、原作ファンの方が観劇されたならきっと納得ね、と思っていたのですが、突出しすぎるのも、それはそれでアンバランスなんですね。そんなことをちょっと思いました。😉

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