2023年星組 「1789 －バスティーユの恋人たち－」の第一場、主人公ロナン・マズリエの父がペイロール伯爵に連行されるときの罪状は、税金の不払い。バティスト・マズリエ（by 夕渚りょう氏）は、すかさず言い返します。「なんのことだ？第一、これ以上払えるものなどない！」（干ばつで作物が全滅したから）
それを受けてのナンバー「♪肌に刻み込まれたもの」が始まります。歌詞が、♪ただひとつ残ったのは～♪この体の肌一枚～～♪
この歌は、肌一枚になるまで他は全部むしり取られた、みたいな歌かと思っていたら、そうではなく、肌に苦しみが刻み込まれているから、それをタダで売ってやろうかって言いたくなる、という歌だったんですね。
直接的な表現で、言いたいことはよくわかる。でも最初聞いたときは、ちょっとどきっとしました。舞台上の農民が腕まくりして、本当に苦しみをタダで売ってやろうか！みたいに抗議する場面でもあるし。
2015年初演時には、現在よりも曖昧な受けとめ方で聞いたこの「ただひとつ残ったのは、この体の肌一枚に刻み込まれた苦しみ」というフレーズ。2023年の星組公演でさらにぎよっとすることに。
税負担が重くなり、税金を課されるより、お上に年貢を取り立てられる感覚に現実味が感じられる昨今。払えるものなどない！って言っても変わらないしね。さらに、政府の失策まで重なって、パンがなければお菓子を食べれば…は、2025年に、お米がなければレトルトパックご飯を買えばいいじゃない、となって帰ってきた…
パンがなければお菓子的なセリフが、揶揄でなく至極マジメに、パックご飯や麺を当てはめて連想される世界がくるとは思いもよりませんでした。
以前から、年貢とか、取り立てる、みたいなセリフに反応してしまいます。なぜなら、遠い過去のこととして呑気に聞いている状態から、現代でも起こりつつある、を肌で感じているか、もしくは、現代でも同じになるかもしれない恐怖があるから。そうなったら、ものすごく皮肉なことだと思うから。
最初に「年貢」に反応したのは、2014・2015年宙組公演「白夜の誓い —グスタフIII世、誇り高き王の戦い—」の映像で、凰稀かなめ氏演じるグスタフIII世が、パリからの帰国途中で友人に言うセリフでした。
「グ：街道すじの家々を見たか？」
「友：ああ、あんなに貧しい暮らしをしているとは」
「グ：年貢が重すぎるんだ。作物が実らない土地ではないはずなのに」
王位についてからは、「貴族諸侯が決めた年貢高もすべて見直せ」との指示。
宝塚の作品には、王政に関する作品や、フランス革命ものなどが多いため、搾取される民衆や、圧政に対する彼らの苦しみや怒りの場面を頻繁に見ることになります。それでも、年貢が重すぎる？あんなに貧しい暮らし？などにのセリフには免疫がつくことなく、どきっとします。
改めて三部会と税について
このグスタフIII世の在位は、1771年～1792年。フェルゼン伯爵を駆使してフランス王室を救おうとした人物だったことから、宝塚で取り上げられるには当然すぎる人物でした。立場としては、フランス王室側に立っていた人物ですが、（当時、実権を持っていた）貴族が農民に課していた重い年貢を憂う感性があった、ってことです。
改めて、「三部会」のWikipediaを見てみますと、こうあります。
フランス革命の時、第一身分は10万人のカトリック聖職者で、彼らはフランス全土の5-10%の土地を所有しており、一人当たり所有率としては全身分の中で最も高かった。さらに第一身分の財産は免税されていた。第二身分は貴族で、子供や婦人を含んだ人口は40万人だった。1715年のルイ14世の崩御後、貴族は権力の回復を享有しており、高位官職や高位聖職、軍会議そしてその他の公共および半官半民の特権を独占していた。封建的慣習により、彼らも第一身分と同じく免税されていた。第三身分は2500万人でブルジョワ、農民その他のフランス国民からなっていた。第一、第二身分と異なり、第三身分は納税を強いられていたが、ブルジョワは何らかの手段でこれを逃れていた。フランス政府財政の重荷は農民や都市労働者といった貧しい人々に課せられていた。第三身分からは上位身分に対する敵意が向けられていた。
つまり、聖職者ははなから免税。
貴族は封建的慣習により免税。
第三身分はこの2つを除く他すべてのフランス国民なので、分母は大きいのですが、そのうちブルジョワは手段を講じて節税などをするので事実上ここに含まれない免税状態。
単に貧しいでなく、手段を持たない一番取ったらいけない層から取る仕組みだった、ということになります。
これは、現代日本でそのまま当てはまらないけれど、課税対象から手段のある人や部分が抜けていく感じは似てますね。大手輸出企業の消費税還付金とか、キックバックなどなど。。。
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