漫画原作に懐疑的、そんな想像もできない時代があったんですね。池田理代子作「ベルサイユのばら」を宝塚の舞台作品として上演するにあたり、劇団側には漫画原作に対する、ファン側には人間が演じて夢が壊れることに対する懸念があった…。
ベルばらブーム以降は笑い話レベルです。最近は2つの局面からベルばらを改めて語ることができるようになったと感じます。2つの局面とは、漫画というメディアの発展と、宝塚の超人的再現能力。
紙でもデジタルでも
漫画とか漫画本なんて言葉が陳腐になるほど、いまは電子コミックが主流になりました。2014年ごろ台頭してきた電子媒体が2019年に紙版コミックと逆転し、現在は、紙+電子マンガで約5000億円市場(出版科学研究所調べ)を形成するまでに。紙+電子マンガの世界は全体で右肩上がりの成長を続けてきたので、人々は、紙でもスマホやタブレットでもマンガを読みまくっており、描く人も読む人もたくさんいる状態です。
宝塚の漫画原作作品、一番最近発表されたのは「シティハンター」(北条司氏による集英社の「週刊少年ジャンプ」』で1985年~1991年に連載された)です。漫画原作の作品がある程度定期的に上演される現在、今度はそれか、みたいな反応になってきました。じゃあ、これはどう?あれも、これも。。。
篠原千絵作「天は赤い河のほとり」(そらはあかいかわのほとり)は、古代オリエントへのタイムスリップものですが、星組2番手スター愛月ひかる氏が宝塚にぴったりだと思い熱望していたという作品。所属していた宙組で2018年に舞台化されることになり、当然こだわりのあったご本人が漫画と首っ引きで黒太子マッティワザの役のビジュアルを再現した、というのです。
芝居の月組ということで、渋い作品も多いからか、月組が上演した漫画原作の作品は、村上もとか氏作「JIN -仁- 」だけ(多分)なのですが、雪組、星組、宙組のあいだでは、いい感じに分散して、それぞれ漫画原作の作品を上演しています。そんななか、近年、花組による特化ぶりがすごいことに。。。
再現性だけでは語り尽くせない
花組の快挙で記憶に新しいのは、「ポーの一族」(2018)「花より男子」(2019)「はいからさんが通る」(2017&2020)の3作ですが、それぞれ明日海りおと柚香光という美の権化のようなジェンヌさんの存在により、いとも簡単に再現されてしまいました。ポーのエドガー、はいからさんの少尉役は、原作の絵の再現性という意味で高みに到達しているのですが、それとは別のベクトルがある、というか、役を自分のものにする感性の高い方々による再現だったため、まさにしゃべって動くエドガーと少尉が舞台上に登場することに。
わたしは、ポーの一族は読んだことがありませんが、はいからさんならば、語れます。例えば、伊集院少尉は、原作から飛び出てきたようでもあるのに、同時にきちんと柚香光氏のつくりあげた人物でもあると感じました。見た目の再現だけでも偉業なんですが、それに留まらないので、観客がなんかすごいもの観た、、ってなるんでしょうね。
ベルばらの歴史
1974年の月組初演を元祖とすると、翌年花組での再演時には、アンドレを主役とする原形が、そして、1976年の星組再演時には、マリー・アントワネットとフェルゼンを中心にすえる原形ができあがり、ベルばら作品群の基礎ができました。
1989年~1991年の平成ベルばらの時代も、繰り返し改訂は行われたのですが、1991年月組上演時に、マリー・アントワネットとフェルゼンが登場しないオスカル編が誕生します。2001年には「ベルサイユのばら2001」として宙組と星組による東西同時上演が行われました。宙組はフェルゼンとマリー・アントワネット編、星組は、主演稔幸氏の引退公演であったため(アンドレとオスカル編でなく)オスカルとアンドレ編の上演となりました。
そして、2006年、マリー・アントワネット生誕250周年記念として、星組と雪組が、それぞれフェルゼンとマリー・アントワネット編とオスカル編を上演するのですが、星組には、雪・月組から、雪組には、星・花・月組から特別出演があり、出演者は入り乱れています。
2013年は宝塚歌劇100周年にあたったため、ベルばら再演必至の年でした。まずは、月組によるオスカルとアンドレ編(ペガサスの造作物に乗って客席方向上部に昇天する演出が登場)が上演されます。このときすでに月組では龍真咲&明日海りおによるダブルトップ体制であったため、2回公演の日にマチネとソワレで入れ替る、を含めてほぼ日替わりの役替わりというデスマーチが行われました。
同年、雪組によるフェルゼン編も上演されました。このフェルゼン編に、宙組から凰稀かなめ氏が特別出演したことが、翌年の凰稀かなめ主演オスカル編への布石となったのではないでしょうか。特別出演時のオスカル姿にインスパイアされ、オスカル編の主演を、となった流れであれば自然です。これが、日本で最後のベルばらでした(2015年に花組が台湾でフェルゼンとマリー・アントワネット編を上演)。
この2014年宙組の「ベルサイユのばら -オスカル編-」は、新人公演で和希そら氏がオスカルを演じた記念すべきベルばらでした。というのも、男役2人のオスカルとアンドレが登場する場合、個人的に、女性にめいっぱい振ったオスカルなら違和感が少ないことに気付いたんです。和希そら氏のオスカルは可愛らしかったし、2013年月組公演も、明日海りおオスカルのほうが自然なベルばらになったと感じました。
ただ、古き良き宝塚の名作を、アニメキャラみたいな人々が演じると、そのギャップが脳に混乱をもたらします。これからは、誰がベルばらに出演しても、見た目は令和のジェンヌさん×古き良きセリフまわしと演技、にならざるを得ない……令和の観客に受け入れられつつ、伝統は守る、というバランスがどんどん難しくなります。この古き良きセリフまわしと演技というのは、様式美として確立されているもので、個人的な解釈の余地はほとんどないようですよ。
「ベルサイユのばら2001」の稔幸さまは、見た目の愛らしさから、わたしの好きな女性に振り切ったオスカルに分類させていただいているのですが、キャストの方々のセリフまわしなどが、やはりこなれていて迫力があります。と、同時に、さらに時代をさかのぼると、逆にセリフが自然に聞こえる場面もあったという現象が。多分、平成後半のキャストだと気負いがあって逆に仰々しく聞こえるのかもしれません。
ということで、ベルばらは、誰がどの役を演じているのか、をよーーく吟味し、心して視聴しないと、混乱しますので、ご注意あれ。😉😉😉😉😉


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