劇場版公開直前2020年の4月27日付の東京経済ONLINEに「鬼滅の刃」が日本中で愛されまくる4つの理由と題して、数土直志という方の書かれた分析が掲載されています。それによると、4つの理由のうちのひとつは設定だ、とあります。鬼殺隊というチーム制で「柱」という名のリーダーを中心としたヒエラルキーが、「ジャンルは異なるが宝塚にも共通する」というご意見。
ちなみに、4つの理由とは、アニメ化効果、全年齢型コンテンツ、設定、枯渇感。
大前提としてヒエラルキーがあることで、「友情、ライバル、先輩後輩といった構図が生まれる。それぞれの立ち位置から多彩なキャラクター設定が可能になる」というのはそうかもしれません。登場人物をグループ毎に整理することができるし、宝塚でいうところの同期がいると、同じレベルからスタートして一緒に成長していく友情物語がより描きやすい。同期は一緒に任務につくし、柱はトップスター、といったところ?
でも、ちょっと飛躍しすぎ、かなー。
ヒエラルキーがあるのは、日本人の性、というかDNAでは?
原作者の吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)さんは女性だと噂される謎の人物。ガチガチな組織を描いたのは意図的なのか、自然発生なのか、知る由もないけれど。。。
柱とトップスター
ごとうげさんには確固たる世界観が第一にあって、それを心のままに表現したかったのが大きいと思います。
短編集を読んだら、怨念とか人間の本質に関わる要素を描きたい信念が感じられて、それらを当てはめて登場する人物や物を構築されたように感じました。
その「泉鏡花の幻想文学のような空気が漂う」と言われる世界観を表現してくれるのが漢字の多用だったり、刀や蜘蛛だったりするのではないでしょうか。(ほとんど同じ時期に週刊少年ジャンプに連載されていた同じくダークなファンタジー作品「約束のネバーランド」がヨーロッパベースなのと対照的)
この「和」の感じを、組織だっている鬼狩りと人食い活動、向上心や滅私みたいなものにまで、どんどん突き詰めていくとああいう漫画ができるのかなー?みんなそんなに頑張らなくても、ただでさえ頑張ってるんだから、と思って見てます。
上下関係が描かれてるから宝塚に当てはめるのは飛躍しすぎ、と言っておいて矛盾するようですが、タカラジェンヌあるあるを会社とかに当てはめるのが好きなんです。会社でも複数人でプレゼンすることとかあるでしょ?あれが舞台みたいなもん。
この人デキるな、だからスピード出世なのか、と心の眼で見ると背中に羽根が生えている。これは単なる例えでなくて、、、ある日本当に背中に大羽根が見えるようだ、としみじみ思ったことがあって、モノゴトを計る別の定規みたいな感覚で使えるんですよ。(ほら、人間だから、なんであの人よりこの人のほうが上なの?とか思っちゃうけど、それだけの実力があるので羽根付けていられる、と思うと納得できちゃう)
鬼殺隊のトップスター的存在「柱」は9名らしいので、トップスターと2番手×5組くらいの数の精鋭ってことですね。階級が10段階あって、甲(きのえ)乙(きのと)丙(ひのえ)丁(ひのと)戊(つちのえ)己(つちのと)庚(かのえ)辛(かのと)壬(みずのえ)癸(みずのと)という呼び方なのだそうです。
このあたりも、研究科一年生から研10まで、と言えなくもない。
主人公竈門炭治郎とその仲間は、原作で読めるかぎり、上から3番目まで上がり、宝塚界隈で言うところの新人公演の長の期に当たる位置まで成長。なんかいい感じに、経験を積んでいながらも成長の途中な感じが出てますね。
たまたま宝塚公式ホームページの月組誕生100周年記念特集のページを見たら、6枚写真が並んでいる行が4つありました。歴代月組トップスターのお写真で、新トップスターは一番下、5行目に。つまり6×4=24人のトップスターの系譜を繋ぐのがれいこさんこと月城かなと氏ということ。
こうして可視化されると、その数の少なさに驚きます。
約20人が5年くらいずつ務めて100年継承されてきた伝統ということね。柱も後継者が決まっている場合があったり、癸(みずのと)から登りつめて甲(きのえ)に達した上で、満たさないといけない条件があるそう。最終決定は上層部が協議して承認するのだろうか…
一番上と2番目は、甲と乙で、甲乙つけ難いの「甲乙」なんだそうです。勉強になりますー。まさにトップと2番手が優越を越えた存在である状態と通ずるところがある。
宝塚を履修していなかったら、柱について何も感じなかったかもしれません。
残虐の奥に流れる乙女心
漫画には、映像の一コマ一コマのように描かれて絵コンテに近くなっているものと、挿絵の多い小説に近いものとあると思います。鬼滅の原作は絵コンテに近く、作者の視点はカメラのそれみたい。テレビアニメや劇場版アニメのセリフやカットが、ほとんど原作な部分も多い印象。作者の頭のなかで鮮明に物語の映像が流れているんだな(当たり前か)。
残虐でグロな部分は、当ブログの苦手分野なのですが、根柢に流れるテーマが乙女な作品の場合は、乙女心を抽出して見ます。😅
短編集に収録されている「肋骨さん」という作品のなかに、羽衣と呼ぶ布が身体から生えてるみたいな「邪気の浄化師」というキャラクター(?)がいて、「これで捕まえてギッ!ってやって浄化します」と言うんです。なんか可愛い。羽衣といい、敵として戦うのが髪をやたら愛でる女性だったり、、狂気の間に垣間見えるちょっとした部分に、乙女心に訴えるものがあるのよね。
いつものように、こういうヒットを生み出せるクリエイティブな力に感服。
新シリーズ「遊郭編」開始で、日曜に全国放送を楽しみにするなんて貴重な体験だ、と思いながら日曜を楽しみにしている編集J。というのも、すぐにネットに静止画と感想がアップされるので、あとから感想を見ようものならいかに日本国民が感動したか、という情報まで入って来る。とあるYouTuberさんが、毒を抜かずにフグを食べたくらいしびれた、って言っていてそれはそれで面白かったのですが。
毎回、毎回、登場する人全員頑張りすぎ、って思っちゃうけども、見る。


コメント