藤沢周平氏(1927~1997)原作の映画は、哀しい物語が多いです。「蝉しぐれ」はその最高峰とも言われますが、タイトルの一遍が一冊に納まっている珍しいケースです。他の作品は、短編集のなかの一話か、複数の短編から要素を少しずつ集めて脚本にしたものばかりです。
宝塚で1994年に舞台化された「蝉しぐれ」。脚本家の黒土三男氏がNHK時代劇ドラマの脚本を書いてこの世に出したのが2003年なので、それより9年前です。2005年には、同じく黒土三男氏の脚本で自ら監督を務めた映画が公開されました。
ふたりが流した笹の船~♪
黒土監督が、宝塚の舞台を見たかどうかはわかりませんが、2005年公開の「蝉しぐれ」には、まるでオマージュのように、笹船が登場します。宝塚版蝉しぐれ「若き日の唄は忘れじ」では、主人公牧文四郎とお福が夏祭りに一緒に出掛ける場面で「♪恋の笹船」という歌が歌われるのですが、ふたりがフェルゼンとマリー・アントワネットばりにファンタジー大笹船に乗って歌うのです。(これが、のちに実際の船に乗る逃避行の場面で活きてきます!)
原作では、要らないと首を振るお福に文四郎が飴を買ってあげる、みたいな甘酸っぱい叙述はあるものの、その後文四郎は喧嘩に巻き込まれるので、喧嘩後「帰るぞ」とお福の前に現れるだけで、ふたりのやりとりはありません。
2005年映画版でも、ふたりで花火を眺めているシーンは淡い恋心が表現されているだけ。お福が所在なげに、河川敷の水たまりに笹船を浮かべていると、そこに文四郎が傷だらけで戻ってくる、という表現になっています。笹船を浮かべている手元が映るのですが、それほど重要アイテムというわけでもないのに、、、「若き日の唄は忘れじ」の影響か!?と思うのは考えすぎでしょうか?
「若き日の唄は忘れじ」 は雪組トップ壮一帆&愛加あゆさまのプレお披露目公演として2013年に上演されました。その後全国ツアーへ。全国ツアーのDVD(2013年9月16日仙台での収録)には、2021年にトップスターに就任した彩風咲奈さまが、主人公の親友、与之助を演じている姿が収録されていて胸アツです。
ご本人が好きな作品に挙げていたことがあると記憶しています。音楽が良いし、いまとなっては、映像などで演出をアップグレードできるので、ぜひ再演を!
最近、テレビドラマ版が再放送されて、改めて蝉しぐれの単行本を引っ張り出して読んでみました。
主人公が荷車で坂を引いてのぼるときに、お福が助けてくれる、という印象深いシーンがあるのですが、原作では既に一人引っ張るのを助ける人がいるんです。あと、主人公が伝授される、秘剣村雨、とはどんな剣か、というと「右手の木剣は八双の位置で天を指していたが、左腕は軽く前方にのびて何かの舞の型に見えた」うーー、イメージがわかぬー。😭😭😭😭😭
藤沢周平の小説をベースに映画化された作品群は、このような記述をよりわかりやすく映像にして届けてくれるありがたい試みです。
お家騒動とか、陰謀渦巻く展開、秘術とか剣術の流派などの題材に、うまく恋や愛も乗せている点で、乙女心にも訴える作品が多いんです。宝塚の舞台しかり、映画しかり、男女の心の機微みたいなものが、必然的に原作よりぐっとクローズアップされるのでそう思うのかもしれませんが。。。
「たそがれ清兵衛」を皮切りに、山田洋次監督により映画化された作品が続いたこともあり、頭のなかでごちゃ混ぜになるので、ちょっと整理してみました!
2002年の「たそがれ清兵衛」は、賞の受賞も多く、山田洋次監督・松竹配給の藤沢周平原作時代劇3部作のベスト。「かくし剣鬼の爪」(2004年)が続き、2006年公開の「武士の一分」で終わりです。主演木村拓哉ということもあって興行成績が一番良かったのは武士の一分。その前年、2005年に「蝉しぐれ」が公開されたわけですが、黒土三男氏は、山田洋次監督映画に脚本家として参加したりして、いわば、弟子的な脚本家さんなのだそうです。ということで、たそがれ清兵衛、かくし剣鬼の爪、蝉しぐれ、武士の一分の4作を山田監督系作品群とします。
そして、藤沢周平原作映画は2008年を起点にまた4作続くのですが、短めな作品がほとんどで、やはり山田監督系とは趣が全然違います。「山桜」と「花のあと」の2作に、一青窈さんの歌う主題歌が最後に流れるし、「山桜」と「小川の辺」の2作は監督と主演(東山紀之)が同じ、と、ややこしさが増します。羅列するとこんな↓感じ。
2002年 たそがれ清兵衛 山田洋次 松竹 129分 音楽:冨田勲 原作:「たそがれ清兵衛」「祝い人助八」「竹光始末」 2004年 かくし剣鬼の爪 山田洋次 松竹 131分 音楽:冨田勲 原作:「隠し剣鬼ノ爪」「邪剣竜尾返し」「雪明かり」 2005年 蝉しぐれ 黒土三男 東宝 131分 2006年 武士の一分 山田洋次 松竹 121分 音楽:冨田勲 原作:隠し剣秋風抄の第9話「盲目剣谺返し」 2008年 山桜 篠原哲雄監督 東京テアトル 99分 主演:東山紀之 2010年 花のあと 中西健二監督 東映 107分 2010年 必死剣鳥刺し 平山秀幸監督 東映 114分 2011年 小川の辺 篠原哲雄監督 東映 103分 主演:東山紀之
これらの映画のなかで、山田洋次監督作品だけが、~がんす、で終わる原作者の出身地山形県鶴岡市あたりの方言の武家言葉を使用しているのです。
「必死剣鳥刺し」(2010年)は、秘伝の剣法がカギを握るという点で、「かくし剣鬼の爪」(2004年)と混同してしまい、どっちがキズが小さいほうだっけ?とか思ってしまうのですが、今回改めて整理してみると、、山田洋次監督が下級武士の悲哀を際立たせるために方言を使っているのがわかりました。リアリズムの追求の一環でしょうか。
たそがれ清兵衛なんか、真田広之演じる井口清兵衛が、やっとのおもいで幼馴染の朋江(宮沢りえ)に告白したあとに、ちょっとしたタイミング違いで縁談を受けてしまったと言われ、「こんげなことお願いしては悪かったんでがんすのう…」と言うセリフのせつないこと。。。
武士の一分が公開されてすぐ、友人から「~がんす」にはまってます、ってメールがきたのですが、その当時映画見てなかったので、その妙味がよくわからず。。ゴメンよお。
藤沢作品の舞台は、その多くが架空の藩「海坂(うなさか)藩」なのですが、うなさかはん、って響きが良い藩名ですね(!?)真田広之とか木村拓哉みたいな武士が闊歩している藩なんだしー😄😄😄
どの作品が一番好きか、自問したりするのですが、女子目線で「花のあと」北川景子主演です!🥰


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